株式譲渡制限会社

株式会社は、自社株の譲渡や売買を制限し、会社が望まぬ人が株主にならないようにできます。

 

株式の譲渡や売買に関する規定を定めている会社を株式譲渡制限会社と呼びます。

 

株式譲渡制限があると、取締役会あるいは株主総会の承認を得てからでないと、株主は株を譲渡や売買できません。したがって、会社が望まない第三者に株が渡ることはありません。会社は株主を選ぶことができる一方で、広く株主を集めたい場合などには向きません。したがって、株式譲渡制限は中規模企業に向けた制度と言えるでしょう。

 

公開会社

これに対して、譲渡制限の規定を設けていない会社を「公開会社」と言います(この場合の「公開」とは、上場しているという意味ではありません)。希望する誰もが株主になることができますので、大企業向けの制度です。

 

 

株式譲渡制限会社になる方法

取締役会を設置している会社の場合、会社定款に下記のような規定を定めることで、株式譲渡制限会社になることができます。
 
「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない」
 
取締役会を設置していない会社は、株主総会の承認を受けるように
規定します。
 
 

メリット

株式譲渡制限会社になることのメリットは下記のとおりです。(株式譲渡制限会社は、会社法の中の中小規模企業向けの規定が適用されます。)

 

役員の任期を10年まで延長できる

通常、取締役・会計参与の任期は2年、監査役の任期は4年ですが、株式譲渡制限会社では定款に定めることにより、それぞれ10年まで任期の延長が可能です。

 

取締役は1名で可、取締役会を置かなくともよい

株式譲渡制限会社は取締役会を設置しなくても構いません。よって取締役1名でも会社を設立できます。一方、公開会社は取締役会を設置しなければなりません。ということは、自動的に取締役3名以上、監査役(または会計参与)1名以上が必要ということになります。

 

取締役・監査役になる人の条件を決めることができる

株式譲渡制限会社では、定款に定めることにより、取締役・監査役を「株主に限る」などと限定することが可能です。公開会社では、このような制限を設けることはできません。

 

相続などでの株の分散を防止できる

株式譲渡制限会社では、定款に定めることによって、相続などで移転した譲渡制限株式について、会社が相続人に対して、売渡を請求することが可能になります。これにより、相続による株式の分散や、会社にとって不都合な人物が相続により株式を取得することを防止できます。

 

株主総会の招集を簡略化できる

株主総会は、原則開催日の2週間前に書面またはメールにて通知しなければなりませんが、株式譲渡制限会社の場合は、開催日の1週間前までに口頭による召集が認められています。

 

そのほかにも「株券原則不発行」、「監査役の業務を会計監査に限定できる」などのメリットがあります。